高知地方裁判所 昭和43年(行ウ)10号 判決 1974年3月11日
高知県中村市大橋通り五丁目二四一一番地
原告
有限会社四万十骨材
右代表者清算人
植村純一郎
高知県中村市新町四丁目
被告
中村税務署長
斉藤正
右指定代理人
民谷勲
同
川井重男
同
河村幸登
同
上林淳
同
河野時造
同
中野大
同
土居鬼志雄
同
西原忠信
右当事者間の昭和四三年(行ウ)第一〇号法人税額更正処分取消請求事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一、当時者双方の求めた裁判
一、原告
「被告が原告の昭和四一年一月二九日から同年一二月二〇日に至るまでの事業年度の法人税確定申告につき昭和四五年一一月一八日付をもつてした更正処分はこれを取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決。
二、被告
主文同旨の判決。
第二、原告の請求原因
一、原告は、昭和四一年一月二九日から同年一二月二〇日に至るまでの事業年度(以下本件係争事業年度という。)の法人税につき昭和四二年六月欠損金三、四三八円として確定申告したにもかかわらず、被告は、昭和四二年六月三〇日付をもつて、所得金額を三、九一八、五五五円、法人税額を一、二〇九、七〇〇円とする決定をした。
二、原告は、右決定を不服として直ちに被告に対し異議申立てをしたが、被告は、昭和四二年一一月二八日付をもつて、所得金額を三、五一〇、〇四六円、法人税額を一、〇九九、六〇〇円とする一部取消の決定をした。
三、原告は、右決定を不服として、昭和四二年一二月一二日高松国税局長に対し審査請求をしたところ、同局長は、昭和四三年八月二九日これを棄却する旨の裁決をなし、同裁決書謄本は同年九月八日原告に送達された。
四、被告は、昭和四五年二月二六日付をもつて、所得金額を三、二九〇、四八九円、法人税額を九五九、〇〇〇円とする更正をした。
五、さらに、被告は、昭和四五年一一月一八日付をもつて、所得金額を二、九八五、四四一円、法人税額を八五二、二〇〇円とする更正(以下本件更正処分という。)をした。
六、しかしながら、本件更正処分は、所得金額の過大な認定、すなわち減価償却費として五、二一一、三〇一円の控除をなすべきところ、それより少額の二、一八〇、九四〇円のみしか控除をなしていない違法があるから、その取消しを求める。
第三、被告の答弁および主張
一、請求原因に対する答弁
1. 請求原因第一項の事実中、原告が本件係争事業年度の法人税につき確定申告した、との点は否認する。その余の事実は認める。
2. 同第二項ないし第五項の事実は、いずれも認める。
3. 同第六項の主張は争う。
二、被告の主張
原告の本件係争事業年度における所得金額は二、九八五、四四一円であり、その内訳は左記のとおりである。なお、その計算関係については別紙一および二のとおりである。
記
(一) 益金 一〇、二五八、六八五円
(1) 売上 七、五七七、六〇四円
(2) 雑収入 二、五八四、六九一円
(3) 受取利息 九六、三九〇円
(二) 損失 七、二七三、二四四円
(1) 仕入金 二一、六三〇円
(2) 営業費 四、九七六、六二四円
(3) 譲渡損 三五、二一〇円
(4) 雑損失 三二、〇〇〇円
(5) 創立費 二六、八四〇円
(6) 減価償却費 二、一八〇、九四〇円
(三) 所得金額 二、九八五、四四一円
なお、右(二)の損失のうち(2)の営業費については原告の主張する金額四、九三五、一四二円に次に述べる四一、四八二円を加算して四、九七六、六二四円とし、原告に有利に計算したものである。即ち、原告は、昭和四一年六月二二日訴外南海工業株式会社に対し砂利採取権を無償で譲渡した。それで、譲渡時の砂利採取権の価格三、六四一、〇九一円を法人税法第三七条第五項に該当する寄附金とし、この損金算入限度額(同条第二項参照)四一、四八二円が損金に算入されることとなる。この算式を示せば次のとおりである(法人税法施行令第七三条参照)。
(寄附金支出前所得金額)(資本金)(事業年度の計数)
<省略>
従つて、原告の法人税額は八五二、二〇〇円となり、これに基づきなされた本件更正処分は適法である。
第四、被告の主張に対する原告の答弁および反論
一、被告の主張に対する原告の答弁
原告の本件係争事業年度における所得の計算上益金に計上すべきものとして売上七、五七七、六〇四円、雑収入二、五八四、六九一円、受取利息九六、三九〇円があり、また、その損金に計上すべきものとして仕入金二一、六三〇円、譲渡損三五、二一〇円、雑損失三二、〇〇〇円、創立費二六、八四〇円があつたことは認める。損金に計上すべきものとしての営業費については、被告の主張額より少額の四、九三五、一四二円である。原告の本件係争事業年度における所得金額が二、九八五、四四一円であること、減価償却費が二、一八〇、九四〇円であることは争う。減価償却費については、別紙一の原告の主張欄に掲記のとおり算出すべきものであつて、その総合計額は、五、二一一、三〇一円であり、従つて所得は存しない。なお、別紙一の減価償却資産について、被告と相違するところを以下に述べる。
1. 別紙一のうち<1>の砂利採取機について
被告は、原告が昭和四一年二月一日訴外島田昇から砂利採取機を一、〇〇〇、〇〇〇円で取得した旨主張するが、右取得の点は認めるが、その価格については否認する。原告は、同機械が現状のまま直ちに利用できることと新設に要する費する費用の点を参酌して右訴外人から四、八〇〇、〇〇〇円で譲り受けたものであつて、それは妥当な価格というべきである。
2. 同<2>の砂利採取権について
原告が昭和四一年二月一日訴外島田昇から砂利採取権を取得し、同年六月二二日訴外南海工業株式会社に無償譲渡したとの点は否認する。原告は、設立後わずか半年に至らずして赤字で倒産状態となつたのであるから、原告に砂利採取権という財産権のある訳がない。
二、被告の主張に対する原告の反論
被告のなした本件更正処分は、左記のとおり違法なものである。
1. 原告は、法定期限内に確定申告をしなかつたが、その後被告が昭和四二年六月三〇日付をもつて法人税の決定をする以前に昭和四一年一二月三一日付貸借対照表および損益計算書の提出をもつて確定申告をしたのであるから、被告は原告の右申告に対し、国税通則法第二四条による更正処分をなすべきであるのにそれを無視して同法第二五条の決定をなした違法が存する。
2. 憲法第一四条、第三〇条に違反する違法な処分である。すなわち、被告は、相続税における相続財産の評価をなすについては相続財産評価基本通達の規定に従いながら、本件営業権の評価をなすについては法人税取扱い基本通達一五六および同三五五(一)を無視し恣意的に被告の主観的見解に基づいて処分をなしたものである。
第五、証拠関係
一、原告
1. 甲第一号証、同第二号証の一ないし四、同第三ないし第五号証を提出。
2. 証人森田智の証言(第二回)を援用。
3. 乙第八号証の成立は不知、その余の同号各証の成立(同第五号証については原本の存在共)は認める。
二、被告
1. 乙第一ないし第九号証、同第一〇号証の一、二を提出。
2. 証人森田智の証言(第一回)を援用。
3. 甲第二号証の一ないし四の各成立は不知、その余の同号各証の成立は認める。
理由
一、原告主張の請求原因一ないし五の事実(本件更正処分の経緯)は、原告が本件係争事業年度の法人税につき確定申告をしたとの点を除き、いずれも当事者間に争いがない。原告は、本件係争事業年度の法人税につき確定申告をした旨主張するが、確定申告とは、内国法人が各事業年度終了の日の翌日から二月以内に税務署長に対し、確定した決算に基づき法人税法第七四条に掲げる事項を記載した申告書を提出することを指すところ、本件にあつては、本件係争事業年度の終了の日の翌日である昭和四一年一二月二一日から二月以内に右申告書を提出しなかつたことは原告の自陳するところであるから、右確定申告書の提出期限の経過後に原告がその主張する書類を提出したからとて確定申告がなされたものとはいえない。従つて、この点に関する原告の主張は失当である。
二、ところで、原告の本件係争事業年度における所得の計算上益金に算入すべきものとして売上七、五七七、六〇四円、雑収入二、五八四、六九一円、受取利息九六、三九〇円があり、また、その損失に計上すべきものとして仕入金二一、六三〇円、譲渡損三五、二一〇円、雑損失三二、〇〇〇円、創立費二六、八四〇円があつたことは当事者間に争いがない。また、営業費については、被告において原告の主張する金額四、九三五、一四二円以上に四、九七六、六二四円を損失として計上しているので、この範囲においては原告に有利となつている。そうすると、本件更正処分の適否の争点は、損失として減価償却費をいかほど算入すべきであるかの点に帰着するので、以下これについて判断する。
三、被告ならびに原告の各減価償却額の計算根拠については、別紙一に記載のとおりであり、それによると、減価償却資産のうち<1>、<2>が最大の争点であることが明白であり、<6>ないし<8>についてはその償却額の総合計においては当事者間に争いがなく、また、<9>については償却額につき当事者間に争いがない。さらに、<2>の砂利採取権は別として、その余の減価償却資産についての耐用年数については当事者間に争いがなく、しかして、右資産についての減価償却率については減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表一〇に規定されているところであるが、同表に定めている償却率は事業年度の期間が一年である場合のものであるから、本件のように事業年度の期間が一年未満の場合(本件にあつては一一ケ月)はその割合に応じて換算した率で償却額を計算することになる。その換算は、定額法の場合は当該固定資産の耐用年数に応ずる償却率に当該事業年度の月数を乗じてこれを一二分し、定率法の場合は、当該固定資産の耐用年数を一二倍しこれを当該事業年度の月数をもつて除して得た各数値をもつて、耐用年数に対応する償却率とする。これを本件についてみれば、別表一のうち(2)の減価償却資産については暫く措き、その余の減価償却資産(但し、減価償却額につき当事者間に争いのない減価償却資産については判断するまでもない。)についての償却率は、別表一の被告の主張欄に記載されているところと同一に帰する(なお、この点については原告の主張も同一であり、当事者間に争いのないところである。)。
そこで、当事者間に争いのある減価償却資産の償却額について順次検討を加える。
なお、減価償却資産の償却額の計算および償却の方法については、別紙二の一において被告の述べるところと同一に帰する(原告は、法人設立の日の属する事業年度に係る確定申告表の提出期限までに償却の方法のうちそのよるべき方法を書面で被告に届出を行なつていないことについては、原告の明らかに争わないところであるから、自白したものとみなす。)。しかして、別紙一のうち<2>を除くその余の減価償却資産については定率法により、また<2>の減価償却資産については定額法によることとなる。
1. 別紙一のうち<1>の砂利採取機について
原告が昭和四一年二月一日訴外島田昇から右砂利採取機を譲り受けたことは、当事者間に争いのないところである。そこで、同機械の譲渡価格について検討する。成立につき争いのない乙第七号証、その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき同第八号証、証人森田智の証言(第二回)および弁論の全趣旨によれば、訴外島田昇は、個人企業として一級河川渡川における砂利採取にかかる一切の権利(砂利採取権ともいう)を取得して砂利採取業を営んでいたものであるが、原告は、昭和四一年二月一日右訴外人から右砂利採取にかかる一切の権利を砂利採取機と共に一括して四、八〇〇、〇〇〇円で譲り受けたが、同機械は訴外島田昇の操作の誤りで横転し悪くなつていたうえ、同機械は新品の場合約五、〇〇〇、〇〇〇円であるが、原告会社が譲り受けたときには既に八年を経過していたこともあつて同業者間では到底一、〇〇〇、〇〇〇円を超えるものではないと評価されていたこと、それに比し、当時同業者間において砂利採取権が五、〇〇〇、〇〇〇円位で取引されていた実例があることを認めることができる。右認定に反する乙第六号証は前掲各証拠に照らし措信し難く、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。右認定事実によれば訴外島田昇から原告会社に譲渡された砂利採取機の価格は一、〇〇〇、〇〇〇円であり、砂利採取権の価格は三、八〇〇、〇〇〇円として売買されたものと認めるべきである。
果してそうであるとするならば、右砂利採取機の償却限度額は、被告の計算するところと同一に帰し、従つて、この点に関する被告の償却額は相当というべきである。
2. 同<2>の砂利採取権について
前記認定したところによれば、原告は、昭和四一年二月一日訴外島田昇から渡川における砂利採取権を三、八〇〇、〇〇〇円で譲り受けたものである。成立につき争いがない乙第四号証によれば、原告と訴外南海工業株式会社とは同一株主であつて事業内容の充実を計るためと、同じ中村市内において他に類似商号の企業が存在し営業上支障をきたしていたことから、原告は同訴外会社に吸収合併され、昭和四一年六月三日右砂利採取権を無償で同訴外会社に譲渡したことを認めることができる。右認定に反する乙第六号証は、前掲証拠に照らし、措信し難く、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
ところで、砂利採取権は営業権に準ずる権利と認められるので、減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第三により、その耐用年数は一〇年とされる。また、その償却率は、被告の計算するところと同一であつて、〇・〇九二となる。しかして、砂利採取権の減価償却限度額は被告の計算するところと同一であつて、その償却額は一五八、九〇九円となる。従つて、この点に関する被告の減価償却額は相当というべきである。
3. 同<3>のベルトコンベアーについて
取得価額については、当事者間に争いがない。成立につき争いがない乙第三号証によれば、原告において右ベルトコンベアーを本件係争事業年度の全期間にわたつて使用していたことを認めることができ、右認定に反する証拠はない。しかして、その償却限度額は被告の計算するところと同一である。従つて、この点についての被告の償却額は相当というべきである。
4. 同<4>の砂利採取機および<5>のその補強費について
砂利採取機とその補強費の取得価額の総合計においては当事者間に争いがない。しかして、成立につき争いがない乙第六号証によれば、原告において右砂利採取機を事業の用に供したのは昭和四一年七月一日から同年一二月二〇日までであることが認められ、右認定に反する証拠はない。しかして、右砂利採取機とその補強費の減価償却限度額は、被告の計算するところと同一であつて、被告のこれらに対する減価償却額は相当というべきである
5. 同<10>の机について
取得価額については当事者間に争いがない。乙第三号証によれば、原告において右机を事業の用に供したのは、昭和四一年五月三一日から同年一二月二〇日までであることが認められ、右認定に反する証拠はない。しかして、右机の償却限度額は、被告の計算するところと同一であつて、被告のこれに関する減価償却額は相当というべきである。
四、原告は、本件係争事業年度における法人税につき自己が確定申告したことを前提とし、被告の本件更正処分をその発展的手続としてとらえてその違法を指弾反論するが、前述したとおり原告が右確定申告したと認めることはできないから、原告の右反論はその前提を欠き理由がない。
さらに、原告は、被告の本件更正処分につき憲法違反であると反論するが、その理由とするところは要するに、租税賦課処分については、法律の解釈や取扱基準を明らかにした基本通達が存じ、すべての場合にこれに従つて処理されるべきであるのに、本件砂利採取権の評価に限りこれを無視し、営業権に準ずる財産権とみてその価値を三、八〇〇、〇〇〇円と評価したことが不当であるということに尽きる如くである。しかしながら、原告挙示の基本通達は、実質的評価の困難な種類の営業権について、実質上の損金を営業権の名の下に恣意的に計算書類上資産として計上し税の免脱を図ることを防止するための規定であつて、本件砂利採取権の如く、客観的かつ適正な価値が容易に認められる財産権についてのものではないから、これに従うべき性質のものではなく、被告の右評価は前述したところから明らかな如く極めて正当であつて、この点に不当な廉はないというべきである。従つて、原告のこの点に関する右反論は理由がない。
五、以上の次第であるから、被告のなした本件更正処分は適法であり、これが違法であることを前提とする原告の本訴請求は失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 安藝保壽 裁判官 上野利隆 裁判官林豊は転任につき署名押印することができない。裁判長裁判官 安藝保壽)
計算について
<省略>
別紙一
減価償却費の
<省略>
別紙二
減価償却費算出についての説明
一、減価償却資産の償却費の計算およびその償却の方法については、法人税法第三一条に規定されているところである。そして、法人税法施行令第四八条により、償却の方法として、別紙一のうち<2>を除くその余の減価償却資産については定額法と定率法のいずれかを選定することが認められており(同条第一項第一号)、また<2>の減価償却資産については定額法を選定することが認められている(当時施行されていた同条第一項第三号)。また、法人税法施行令第五一条によると、原告は法人設立の日の属する事業年度(法人税法第一四条第一号により昭和四一年一月二九日から同年一二月二〇日)に係る確定申告書の提出期限(法人税法第七四条の規定により昭和四二年二月二〇日)までに、償却の方法のうちそのよるべき方法を書面で被告に届出なければならないところである。けれども、原告は右の届出を行なっていないので、法人税法施行令第五三条により<2>を除くその余の減価償却資産については定率法により、また<2>の減価償却資産については定額法により、それぞれ減価償却した。
二、別紙一のうち<1>について
原告は、訴外島田昇から<1>の砂利採取機を昭和四一年二月一日に四、八〇〇、〇〇〇円で取得したとして減価償却をしているが、調査の結果、<1>の砂利採取機の取得価額は一、〇〇〇、〇〇〇円で、残額の三、八〇〇、〇〇〇は<2>の砂利採取権の取得価額と認められる。<1>の砂利採取機は、五ケ月陸動した後横転し、その後は使用されていない。
原告の本件係争事業年度は、昭和四一年一月二九日から同年一二月二〇日までであり、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(以下「耐用年数省令」という。)第四条第二項にいう「法人の事業年度が一年に満たない場合」に該当するので、同条第二項、第三項により定率法の償却率を計算することになる。ところで、<1>の砂利採取機の耐用年数は二年と考えられ、本件係争事業年度の月数は一一であるので、左記計算のとおり二・二七年に対応する償却率によることになる。
2年×12÷11=2.27年
しかし、耐用年数省令別表第一〇には、二・二七年といった一年に満たない端数については定めがないので、原告に有利に償却を認めることとして、端数を切り捨てて、耐用年数二年に対応する償却率によることとした。以下<2>を除くその余の減価償却資産についても、すべて一年に満たない端数は切り捨てた耐用年数に対応する償却率によることとした。
次に、<1>の砂利採取機は、前記のとおり本件係争事業年度の中途で事業の用に供され、中途より事業の用に供されなくなつている。そこで、<1>の砂利採取機の償却限度額は、法人税法施行令第五九条第一項第一号、同条第三項により、定率法により計算した同施行令第五八条の規定による償却限度額に相当する金額を、当該事業年度の月数である一一で除し、これにその事業の用に供した月数である五を乗じて算出した。以下、他の減価償却資産のうち、事業年度の中途で事業の用に供され、或いは中途より事業の用に供されなくなつたものについても、同様に計算した。
三、別紙一のうち<2>について
<2>の砂利採取権は、営業権に準ずる権利と認められるので、耐用年数省令別表第三により、その耐用年数は一〇年と考えられる。また、原告の本件係争事業年度は一年に満たない場合であるので、耐用年数省令第四条第二項、第三項により、<2>に対する定額法の償却率は左記計算のとおり〇・〇九二となる。
0.1×11÷12≒0.092
次に、原告は、<2>の砂利採取権を昭和四一年二月一日に訴外島田昇から取得し、昭和四一年六月二二日に訴外南海工業株式会社へ無償譲渡している。それで、事業の用に供した月数を五として計算した。
四、別紙一のうち<4><5>について
この砂利採取機を事業の用に供したのは昭和四一年七月一日から同年一二月二〇日までであるので月数を六として計算した。
五、別紙一のうち<8>について
この補強費を支出したのが昭和四一年九月二二日であるので事業の用に供した月数を三として計算した。
六 別紙一のうち<10>について
机を事業の用に供したのは昭和四一年五月三一日から同年一二月二〇日までであるので、月数を七として計算した。
七、別紙一のその他の部分について
1. 前述以外の点については、減価償却計算書(甲第二号証の四)の数価を相当と認め、これを基礎として計算したものである。
2. 「被告計算による当期償却限度額」の算出に当って、<3>乃至<5>及び<6>乃至<8>は、法人税法施行規則一八条の規定により一括計算した。
3. 「被告が認めた当期償却額」欄中<7>および<9>の欄は、被告の計算額より原告の計算額が少額のため、法人税法第三一条第一項により、原告の計算額にとどめたものである。